季節を表した植物や動物、行事などが各札に書かれている花札。その中に他の札とは少し雰囲気が違う「鬼札」があります。名前からしておどろおどろしい印象ですが、その意味が怖いというのは本当なのでしょうか?
また、縁起の良い札や各月の絵札の意味も徹底調査しました。
花札 「鬼札」の意味は本当に怖い?
結論から言いますと、鬼札の意味は怖くありません。ではなぜ、怖いと言われるようになったのでしょうか?
「鬼札」の意味には2つある
鬼札の1つ目の意味は節分に配られる厄除けのお札で、特に東京浅草寺で配られるものが有名です。2つ目は、鬼の図柄が描かれた札ということです。
鬼札は、トランプのジョーカーのような役割で、他の札と組み合わせることができる万能札で一般的に「カス札」とも言われています。
「鬼札」の絵柄が怖い?
鬼札には、雨の中、傘をさして柳の下に立つ人物が描かれています。この絵柄が一部の人には不気味に映ることがあるようです。特に、遠目で見る人物の顔が分かりにくかったり、雷や不気味な鬼瓦のような図柄が描かれていることもあり、それが「鬼」という名前に結びついて「怖い」という印象を与えるのかもしれません。
また、「なんでもあり」の強力さが特にゲームの展開を大きく左右し「鬼」のように強い札というイメージに繋がったと考えられます。
花札の中に縁起の良い札はある?
花札の中にはいくつか縁起の良い札があります。ここでは、その中でも特に縁起が良いと言われる札を紹介します。
松に鶴(1月)
松は一年中青々としていることから「永遠の命」を、鶴は千年生きると言われることから「不老長寿」を表します。この二つが合わさることで、非常に縁起の良い組み合わせなのです。
また、鶴は生涯つがいを変えないことから、結婚式にも良い柄と言われています。
桐に鳳凰(12月)
鳳凰は伝説上の霊鳥で、聖天子が即位すると現れると伝えられており、唯一鳳凰が止まると言われる気が青桐であり、桐は歴史的に「高貴な花」とされています。
鳳凰は「飛躍」「雄大」「大器」の象徴とされ、高潔な志や、広い世界への夢を持って努力する若者の姿と重ねられます。
芒に月(8月)
十五夜の月見を表す札です。満月は円満や成就を象徴し、縁起が良いとされています。
【花札】各月の絵柄の意味を徹底調査!
花札には各月ごとに違う植物の絵柄が描かれているということで、その意味を徹底調査しました。
1月:松(まつ)「松に鶴」
松は1年を通して緑を保つ常緑樹であることから「不老長寿」の象徴とされており、「鶴は千年、亀は万年」という言葉があるように、鶴もまた「長寿」の鳥です。この組み合わせは、長寿や繁栄を願う吉祥の意味が込められています
2月:梅(うめ)「梅に鶯」
2月は旧暦で春にあたり、梅は春の訪れを告げる花とされ、鶯はその梅の木に止まって美しい声で春の到来を告げる鳥です。しかし、花札に描かれている緑色の鳥は、実際にはメジロであるという説が有力で、春の喜びや風流な情景を表していると言われています。
3月:桜(さくら)「桜に幕」
日本を代表する花である桜は、お花見を象徴しています。桜の木の下に引かれた「幕」は、お花見の宴会を表していると考えられており、9月の「菊と盃」と合わせて「花見酒」という役ができることから、その意味が伺えます。
4月:藤(ふじ)「藤に不如帰(ほととぎす)」
藤は美しい紫色で知られる花で、初夏を彩り、不如帰は、初夏に渡来する鳥で、その鳴き声が古くから和歌に詠まれてきました。古今和歌集などに由来するとされ、風流な情景を描いています。
5月:菖蒲(あやめ)「菖蒲に八橋」
5月に見頃を迎える菖蒲が描かれており、八橋はカキツバタの名所であることから、その美しい風景がモチーフになっています。
6月:牡丹(ぼたん)「牡丹に蝶」
牡丹は「花の王」と称される豪華な花で、その美しさから富貴や幸福を象徴し、蝶はさなぎから美しい蝶に変わることから復活や不死を意味すると言われています。この組み合わせは縁起が良いとされ、武士の家紋にも使われていました。
7月:荻(はぎ)「萩に猪」
秋の七草の一つである萩は、魔除けの力があるとされており、猪は仏教において戦の神様の使いとされる一面があります。この組み合わせの明確な由来は不明ですが、荻が猪の寝床とされていたという説があるようです。
8月:芒(すすき)「芒に月」
旧暦の8月15日の中秋の名月を表しており、月見の情景を描いています。芒は秋の風物詩であり、風に揺れる様子が美しいです。
9月:菊(きく)「菊に盃」
9月9日の「重陽の節句」で、菊を用いて不老長寿を願う行事が行われます。菊は長寿や無病息災の象徴とされ、盃は酒宴を表し、3月の「桜に幕」と合わせて「月見酒」の役ができることから、酒宴の情景が読み取れます。
10月:紅葉(もみじ)「紅葉の鹿」
紅葉は日本の秋を象徴する美しい風景です。鹿が横を向いていることから「しかと=無視する」という言葉の語源になったという説がありますが、意味的には美しい自然の風景が描かれていると言えます。
11月:柳(やなぎ)「柳に燕」
柳は水辺に生える気で、しなやかさや風情を表します。燕は春に渡来し、子育てを行う鳥で、古くから親しまれている鳥です。柳と燕の組み合わせは、梅に鶯と同様に、調和の取れた美しい情景や、春の訪れを表すとも言われています。
この月には、雨や雷・傘・カエルが描かれている札もあり、雨降りの情景や江戸の洒落言葉に由来するということです。
12月:桐(きり)「桐に鳳凰」
桐は昔から高貴な植物とされており、家紋などにも用いられてきました。鳳凰は、伝説上の霊長で、桐の木にしか止まらないとされており、この組み合わせは、非常に縁起が良いとされ、花札の中でも特別な意味合いを持っています。
最後に
今回は、花札の「鬼札」の意味がどのように怖いか調査してきました。「鬼札」は怖い意味ではなく、ネーミングが何となくそういう雰囲気を醸し出していることが怖いと言われる理由かもしれません。
また、縁起が良い札や各月ごとに深い意味が隠されていることなどもわかり、花札を全く知らない方でもその意味や由来は興味深いと思えるのではないでしょうか。